沈 桂栄 <二泉映月>パンフレットご紹介
 
 

超優秀録音による二胡伝統芸術!
二泉映月始め珠玉のベスト15曲

日中国交正常化35周年記念

二胡伝統芸術の真髄  現代貴重な伝統奏法。 優秀録音で聴く二胡真の音色

伝統奏法の継承者
文革前の中国を経験している貴重な存在。 二胡古来伝統の素朴な音色。
デジタル化された奏法と次元の異なる録音。 この演奏に芸術への、祖国への想い、 二胡芸術継承への強い意欲が込められている。

明治大学名誉教授 江波戸 昭

優秀録音で楽しむ二胡伝統芸術
楽器自体の原音を高い鮮度で伝える清楚なHI FI 録音。瑞々しく立体的。 優秀録音盤として高く評価できる秀作の誕生。

オーディオ評論家 斉藤 宏嗣


嘗ての中国の街角に漂っていた
本物の二胡の音色

半世紀を二胡一筋に生きた本物の音色とはどういうものか広く世に知らしめたい。 かつての中国の街角に漂っていた庶民の暮らしを想像させるあの音色。
二胡学習者にも、一般音楽愛好家にも
充分通じ、二胡芸術に多くの方が興味を抱いていただける内容。

二胡研究 エグゼクティヴ・プロデューサー
法村 香音子

(ライナーノートより 順不同)

 
二胡伝統の貴重な継承者、沈 桂栄
明治大学名誉教授 江波戸 昭

実は、私はまだ沈 桂栄さんとは面識がない。
もちろん、実演にも接したことはない。プロフィールによれば、1961年に初めて二胡の全国大会に入選したというから、
文革前の中国で古典音楽の基礎を身につけたということになろう。
数多くの在日外国人演奏家の中で滞日期間はまだ短いながら、経歴からすると文革前の中国を体験している貴重な
存在といえるのではなかろうか。
それは今回録音された「二泉映月」を聴いてみるだけで納得いくことだった。二胡伝統のありのままの自然を感じさせる
素朴な音色、最近多いあまりにもデジタル化された奏法とは次元の異なる録音といえようか。
阿炳の通称で知られている流浪の芸人華 彦鈞の作、二胡最高の名曲とされるこの曲は、弾き手によってそれぞれの味
わいが映し出される。社会的に恵まれず、貧困の庶民の中に生きてひたすら芸術を追求した阿炳の心情を、文革を経験
し、長い間祖国で活躍したうえで来日した沈さんもまた、異なった側面からその弦に託しているのではあるまいか。
さりげなく、力まずにこの名曲に淡々と立ち向かう沈さんの調べに、芸術への、祖国への想い、二胡芸術継承の強い意欲
がこめられているのが聴き取れよう。


二胡伝統芸術を優秀録音で楽しむ

                           オーディオ評論家 斉藤 宏嗣

中国の民族楽器〜二胡は古典からポップな女子十二楽坊まで広く愛聴されている。
沈 桂栄は正統的な二胡の継承者でわが国で後進の指導にもあたる名手。
本アルバムは伝統の二胡音楽を綴った貴重な記録。
エンジニアは多くのクラシック名録音を手掛け、圧倒的高品位録音“怒涛万里/鬼太鼓座”の名手服部 文雄が担当。
二胡音像は適度な遠近感でクッキリと緻密に中央に定位。原音を高い鮮度で伝える清楚なHI-FI録音。
ピアノ伴奏パートはホールアコースティツクと融合したピアノを背景に二胡音像が瑞々しく浮き上がる。優秀録音として
高く評価できる秀作。
 
   
 
 

制作にあたって

ニ胡研究 / エグゼクティブプロデューサー 法村 香音子

  或る時から二胡が日本において流行りだし、ブームにのって二胡演奏者が数多く世に出た。
しかし私はそのどれも、大陸中国のかって街角に漂っていた、庶民の暮らしを想像させるあの音色とはどこか違う、という
不満が終始つきまとった。そして人生の晩年になって沈二胡と出会い、日本人の誰でもが知っている“蘇州夜曲”一つを
取って他と聴き比べただけでもそのあまりの違いに驚いた。その感動は間を置かずして、「生まれ育った中国を愛し二胡
を愛する者として、この“天佑”を独り占めにする手はない、聴き手におもねるような変な癖のない素直な音色、半世紀を
二胡一筋に生きた本物の音色とはどういうものかを広く世に知らしめたい」という強い思いを駆り立てることになった。
  今回のCD制作に際して沈 桂栄先生は「伴奏なしは、歌手が下着も付けずに長時間歌わされるようなものだ」と抗ったが、
「誰にもマネ出来ないことだからこそ」と説得し、独奏曲を多く採り入れることに成功した。 
  更なる“天恵”は「詳細な情報や拉き手の心情を聴き手がそのまま受け取れるように、細工を加えない高忠実度録音」
とのナマ演奏をそのままでというような難しい要求に、“音の匠”と称される録音エンジニア服部 文雄氏が応えてくれた
ことだ。類い希な音感と鋭い感覚を集中させて、ミリ単位の集音差に“匠”のプライドをかける真摯な姿は、制作チームは
無論、言葉の通じない奏者にも全幅の信頼を寄せて悔いないパートナーと映ったようで、沈 桂栄本人は80%も練習の
成果を出し切れていないと悔やむが、私はこの録音の成功を確信することができた。
  内容としては、二胡学習者の参考にもなり、音楽愛好者にも充分通じ、更には二胡芸術に多くの方々が興味を抱いて
頂けるような有名歌曲・楽曲を選んだ。
  伝統的演奏技術の面からは、例えば最下位の第五ポジションから一気に第一ポジションまで指が上昇するが、髪の
毛一本の音の狂いも許されない難度の高い“二泉映月”のような名曲は、練習に練習を重ねた熟練の結果、演奏技術の
微細が心模様を反映する自然な動きとなり、真の音楽となり人の心を捉える音色となるということを知って頂けるであろうし、
本来二胡のビブラートは押さえつけてやたらに振るわせるものではなく、曲によってもそれは微妙に異なり、音にも曲にも
柔らかみや味が出るということに気づかされ、どのように指を動かすのかということにも興味を持っていただけること
だろうと思っている。


 

沈 桂栄 半生と二胡芸術を語る
     訳 / 編 法村香音子

  沈 桂栄が生涯の専業となる二胡を始めたのは小学校1年7才のとき。近所に住んでいた自転車修理職人の老人から 「社会主義はすばらしい」という曲を習ったのがきっかけであった。その後遠縁の叔父が手ほどきをしてくれて、一年ほど 習ったあとに、住んでいた区の少年宮に入って音楽隊に所属して独奏を担当し、様々な活動に参加。まもなく少年宮の 先生の弟である上海歌劇院の主席奏者の顧 彭寿先生に三年ほど習ったのち項 祖英先生と出会い、更に三年間みっちり 二胡を学んだ。
  1964年に上海音楽学院付属中学校に進学して二年生の半年が過ぎた頃、10年間に及ぶ文化大革命が始まる。自分の “出自”がいわゆる地主であり、当時片隅に追いやられていた立場であったため、政治運動に参加しながらも、いつかこの 「革命」がおわった時に、自分はどのように社会参加し仕事ができるようになるのだろうかと考え続け、あれこれと知恵を
絞り、隠れて二胡の練習を続けた。他の楽器、たとえばヴァイオリンやピアノ、音楽理論なども専門の先生から学ぶことが できたのもその頃であった。卒業に際し、「沈 桂栄ほど努力する学生はこれからも出てこないだろう」と先生が言ったと後に人づてに聞いたぐらい本当に努力した。
  1971年に電影楽団(シネマ楽団)に配属後の30年間は映画音楽の独奏も担当する一方演奏を指導し、2006年4月に 来日するまでアンサンブル、デュオ、ソロ、伴奏など数え切れないほどの演奏活動を行ってきた。
  「二胡演奏を生涯の仕事とする者としてはこれらの活動は至極あたり前であるが、この50年のあいだ更なる向上を目指 して細部に亘る学習や研究を積み重ね、常に自分に厳しく練習に励んで来た結果、多くの人々の支持を得られていることは 私の喜びでありまた誇りでもある」と、沈 桂栄は語る。
  また、日本の曲を理解するということで難しいのは曲の情緒、風格とかそういった音楽の深いところにどれほど近づける かどうかである。録音された曲を聞き、自分の本領を発揮するために練習の繰り返しを重ねることで、より完成度の高い 音色に近づくことを目指している。二胡は中国の伝統楽器であるが、他の楽器同様結局は道具であるから、形式であれ 曲風であれ、どんな表現も可能であり許される。しかし、一般聴衆もそうであるが、音楽を職業とする者は尚更、どのような 音が心地良いものであるかを聴き分ける感覚を養うことが必要であるし、そのためには、いろいろな人のいろいろな演奏 をたくさん聴くことだ」と語る。
  日本へ出発する前日まで上海テレビや劇団で演奏・教育活動をしていた沈 桂栄は、2006年4月4日に山梨県富士吉田市 に居を定めて以来の1年足らずの間に、大小演奏会を既に23回もこなすという精力的な活動ぶりだ。
  「大ホールでのコンサートのほうが、ライト・音響などの設備が上海でやっていた時とあまり差がないので、慣れた感じで演奏ができる」ということは言える。劇場と学校では雰囲気がかなり異なるが、学校などでの演奏会は演奏を聴いて くれている人との距離が近く、一体感があるので好きだ」と言い、本年も各地の教育委員会生涯学習課主催のコンサート を中心に、様々なスタイルの演奏会が目白押しに予定されている。
  「身体は小さいのに、舞台では大きく見えてオーラをはなっている」と、コンサートでの身体全体で表現する情熱的演奏 振りにはみな魅了させられるが、山梨や東京を拠点に開催されている二胡教室でも、科学的で論理的な経験豊かな教授
に魅せられ慕われている。

 
 
沈 桂栄 (しん けいえい) 二胡/二泉/二泉二胡/中胡  Shen Gui Rong , erhu

1950年9月6日生。中国 上海出身。7歳から二胡を始め、11歳で上海コンクールに入賞を皮切 りに以後数々のコンクールに入賞。上海音楽学院卒業後、現在までの37年間プロの二胡演奏家 として活躍。上海電影(シネマ)在職中、100作を越える映画及びテレビドラマの録音を行い、 このうち30の作品において独奏ならびにリードを担当。特に中国中央文化部(中国の文部省) 指定の大作映画「南昌起義(蜂起)」で受け持った独奏は、中国国内で高く評価される。
文化大革命後の1978年「第一回上海芸術コンクール」にて優秀賞(一等賞)を獲得し同日の 「文匯報」(中国文芸界の最有力紙)に掲載される。
2006年4月来日。山梨県富士吉田市を拠点として、UTY(テレビ山梨)“音楽の風”、はーとふる コンサート、国際親善音楽の夕、代々木新春二胡演奏会、御殿場・三島にて日中国交正常化 35周年記念コンサート、河口湖円形ホール、都留「杜のみやこ・うぐいす小ホール」等30回を 越えるコンサートに出演。また「沈桂栄民族器楽学習中心(センター)」を山梨、静岡県で展開、 後進の育成者としても活躍中。


2007年11月1日
東京十条駅前に任 祖泉・沈 桂栄中国民族器楽学習センターを開設。

連絡先:東京都北区上十条2-30-2 協栄堂4F
      Tel & Fax 03-6691-1135
 
   
瀧口 久代 (たきぐち ひさよ) ピアノ Hisayo Takiguchi, piano

富士吉田市出身。国立音楽大学器楽科ピアノ専攻卒。小佐野圭氏に師事。
難しい中国の楽曲を良くこなす沈桂栄とのデュオには定評がある。