The DIDO& ÆNEAS Project
”ディドとエネアス”

原作:ヴェルギリウスの叙事詩【アイネーイス】に基づく、ネイム・テートの戯曲【アルバのブルータス】

台本:ネイム・テート

作曲:ヘンリーパーセル

初演:1689年12月 ロンドン

:紀元前1200年代

:カルタゴ
P.N.Guérin "Enea narra a Didone le sventure di Troia"1815
 

カルタゴの女王ディドの居室。
女王の侍女ベリンダ侍女2とともに、イタリア遠征の途中にカルタゴに立ち寄ったトロイの王子エネアスに恋心を抱きながらもその気持ちを伝えることもできず苦しむ女王に「この恋の成就こそがカルタゴ安泰とトロイの再興をもたらす女神の思し召し」と彼女の恋を後押しする。
そこに現れたエネアスディドへの愛を告白、ふたりは互いの気持ちを確かめ合い、人々は愛と勝利を祝う。

ところ変わって暗い洞窟の中。ディドのカルタゴ支配を不愉快に思う魔法使いは手下の魔女たちを呼び出し、ディドを失脚させるためには偽の神の使者になりすましてエネアスをトロイ再興のためにすぐにイタリアへ向かうように仕向け、ディドを失意のどん底に突き落とすのだと悪巧みを相談する。

侍女たちを連れて森に狩りに出たディドエネアス
ギリシャ神話に出てくるダイアナと猟師アクタイオンの物語を語りながら屋外での食事を楽しんでいると一天にわかにかき曇り、ディト侍女たちは嵐を避けて慌てて帰っていった。そこに一人残ったエネアス魔女のひとりが化けた神の偽使者が呼びとめ、「お前はすぐにこの地を離れ、トロイ再興のためにイタリアへ赴かねばならぬ。」と嘘の命令を告げる。ディドへの愛との板ばさみで悩むエネアスだが、神のお告げは絶対であると出立を決める。
 
港では水夫たちが出帆の準備に余念がない。
その様子をみる魔女たちは計画がうまく進行しているとほくそえみ、次は嵐を起こしてエネアスの船を転覆させよう、これでディドは本当に破滅だと喜ぶ。

ふたたびディドの居室。急遽出発を決めたエネアスの裏切りに深く悲しむディドだが、そこに現れたエネアスを気丈に突き放してみせて、エネアスを旅立たせる。そしてディドは「私が存在したことだけは覚えておいて」とベリンダに言い残し失意のあまり自らの命を絶つ。

文:河野典子